第七章−1
微かに前方が見えるという暗闇の中、私は何度も頭や足を壁にぶつけた。
いくら私の体が入るとはいえ、方向転換は全く出来ないし、頭も余り高く上げられない窮屈な場所。
また狭さ故か中の酸素にも限りがあるらしく、あっという間に消耗しては息苦しさを覚える。
そんな中、私は必死に先へと進む。
のんびりしていたら三津木さんの偽物に追いつかれそうで気持ちが焦っていたのだ。
唯一幸いなのは、いつの間にかあれだけ嫌だった暗闇に気持ちがすっかり慣れてしまった事だ。
というか、もし暗闇が怖ければさっさとこんな所から出ている。
そして窓からの逃走を選んだだろう。
「った!」
地面に何かとがったものがあったのか、鋭い痛みに私は手を離した。
指を口に含もうとして気づく。
この地面が綺麗かどうか分からないのに口に含んだら体に悪いんじゃないか?
そう考え、私はジクジクと痛む指をもう片方の手でしっかりと握りしめた。
握りしめた所でどうにかなるわけではないが、気を紛らわす事ぐらいは出来るだろう。
「後で消毒しないと」
とはいえ、消毒液を得るには医務室へと向かわなければならない。
しかし、どこにいるのか全く分からないのだから今、そこまでたどり着けるかどうか・・・。
明かり?
先の方がぼんやりと光ったような気がした。
私が居参る場所から15メートルほど先だろうか。
ジッと目をこらしてみる。
が、今度は光は見えなかった。
けれど私の中の何かが叫ぶ。
あそこには何かがあるのは間違いないと。
それは確信。
「何処かに出られるのかな?」
既に光は見えない。もしかしたら見間違いかも知れない。
けれど、そう口に出して見ると元気が出てきた。
地面に注意しながら全速力で匍蔔前進を再開する。
もしそこに何もなかったとしても、確かめてみなければ分からない。
そうしてようやく辿り着いたその先は、地面が金網になっている場所だった。
網の下に見覚えのある部屋が移り込む。
そこは医務室だった。
「やった!!医務室に出たわっ!」
と、叫んでから慌てて口を手で覆った。
もし医務室にあの偽物の三津木さんが居れば見つかってしまう。
隠れるようにしながら金網の下を注意深く伺った。
「・・・どうやら、大丈夫みたい」
ホッと息をつくと、私は金網を外し始めた。
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